中国語はおもしろい (講談社現代新書)

中国語はおもしろい (講談社現代新書)

 

 もう10年も前の本だが,中日関係も随分と冷え込んだものではある。しかし,文章はとても説得的で,筆者自身の行動力も含め,全球化時代ではあるのだなと思う(そこに参加したいとは思わないけれども,反り舌とかムリだし)。要は中国文化はプラグマティックであり,抽象性・普遍性に富んでいるということだ。☆☆☆

現在の中国系人は,主として実用面から国籍やパスポートといった事柄をとらえ,心理的または政治的なアイデンティティの問題とは切り離して考える

どんな中国人も,中国人である以前に,北京人なり上海人なり広東人なり客家なりという狭義の帰属感を持つ。その上に表層のようにして重なる中国人というアイデンティティは,当然のこととして,より広く抽象的な概念となる。したがって,日本人という狭義のアイデンティティを持つ人間でも,普通話という彼らの共通語を話すことで,表層部分への参加資格は十分あることになるのだ。

彼ら(中国人)は言葉を信仰の対象にしていない。むしろあきらめの対象,必要悪だと考えている。たとえば金銭のように。言葉も金銭も中国人にとっては目的ではなく手段である。それ自体として信じるに足るものではない。

1971年,…この問題(釣魚台)について,台湾の国民党政権が日本に対して弱腰だと見られたことから,在米留学生たちの帰属感は大きく揺らぎ,一挙に共産党支持へと傾いた。

中国では一貫して新しい言葉を作る努力が続けられているのに対し,日本では外来語や輸入語を翻訳せず,カタカナでおおよその発音を示したまま放置するのが普通になってしまった。

本場の中国料理はこと家庭料理に関する限り,材料も手順も味つけも驚くほど単純なのが基本である。そして応用がきく。つまり,調理法の抽象度が高いために,一つの材料が欠けていても別の材料で代替が利くのだ。もっと言うと,どんな材料であっても中国料理に仕上げることができる。