魔都上海 日本知識人の「近代」体験 (ちくま学芸文庫)

魔都上海 日本知識人の「近代」体験 (ちくま学芸文庫)

とりわけ前半部分がシャープで面白かった。摩登は魔都のことじゃなくてモダンってことなのね。後半はふーんって感じ。粛々とφ(..)メモメモ

・さまざまな水路を自らのネットワークとして展開している「県城」の伝統的な空間に,「租界」から延びてきた数々の「越界築路」としての幹線道路が今度は逆に,またたえず,在来の「水郷」としての秩序を蹂躙しつづけているのである。

・(上海は)想像力の共同体を前提とする「国民国家」にとって,いわばほとんど「破壊装置」に近い存在で,その多様な内実はよくも悪くも,すでに「近代国家」の範疇を逸脱している。

・ちょうど日本において吉宗による漢訳洋書の輸入緩和令が出されたのとほぼおなじ時期の1724年に,今度は日本の措置と全く逆に,即位したばかりの清五代目皇帝雍正帝が先代康煕帝の耶蘇会にたいする寛容な政策を突然廃止したのだった。

・宣教師たちが執拗に地球球体説や太陽中心説を唱えるのは,たんに西洋の進んだ学説や知識を紹介し,中国知識人の啓蒙をはかるだけでなく,それ以外に,…丸い地球にけっして中心=中華がなく,「万国」がすべて平等の「国」であるという概念を中国人全体に植えつけようとしたのである。

・(1937年以降)もはやこれまでのような「ロマン」の対象ではなく,おなじあこがれの地であっても,ほとんど一攫千金のきわめて現実的な場と化してしまったと思われる。そこには近代日本の離脱者よりも,むしろ日本の追随者が大多数を占め,彼らの存在によって,上海はとうとう,たんなる数多くの「外地」の一つとなったのである。

しかしまあ,海野弘ってこんなとこにもしゃしゃり出てくんのかよ(-_-;)。

 

○花粉症一気に悪化。下北沢駅の混沌もあと半月か。帰りの中央線で早くも冷房…。