イスラエルとは何か (平凡社新書)

イスラエルとは何か (平凡社新書)


うん,シオニズムユダヤ教が相反するものであることはわかった。でも,どこぞのラビの御託宣なんか興味湧かないんだよなー。「ユダヤ国家としてのイスラエルの性質そのものによって,種族にもとづく本質主義の復権が正当化され,脱=植民地化に向かう世界の流れを逆戻しにし,ひいては西洋列強による中東の再=植民地化のスムーズな進行さえ期待できるようになるのです」という問題提起やら,シオニズムのイデオロギーが,宗教,民族性,ナショナリズムの三者の混淆を得意とするものであって,その脆さはサンクトペテルブルクに比肩できる…とする辺りには期待できたんだけどねー。「シオニズムは,超自然に代えて自然を,宗教的なものに代えて非宗教的なものを,忍耐と神への信頼に代えて政治的・軍事的な行動主義を据えようとする」なんて辺り,もう2.5/3位賛同しかねるんですけど。中盤は,ユダヤ教礼賛で読むのがシンドかった。ある程度,納得した部分は↓

・非宗教化したユダヤ人は,矜持を自分たちの行動の契機にする。
シオニズム運動の主流は,先住の人間集団を排除し,その財を奪取する移住型の植民地主義をさかんに押し進めながら,ヨーロッパ型のナショナリズムをお手本とするだろう。
・各国の右派勢力は,イスラエルのうちに手本となるモデルを見て取ろうとする。相対的に平等志向だった旧来のイスラエル社会を,いわゆるネオリベの経済体制に転換することに成功した事情も関係している。