• 「ファーブル博物記2 小さな強者たち」(なだいなだ・馬場郁他訳)小さな強者たち (ファーブル博物記 2)

生態学が確立されたのは近年のことといえるが,19世紀のファーブルの仕事は充分に現代的である。比喩や諧謔に富んだ文章から巧妙な話術がうかがい知れるのだが,これを世にあまたある動物番組の如く映像化しようとすると,白けてしまうのだろうなぁ。ただし,同時収録の「女の子たち」はあまりに教訓的処世的終身的で読むに堪えなかった>このあたりが文学者とは呼べない理由か? 以下,いくつか引用↓

「コウモリで感心するのはあの翼だ。イヌやネコと,からだの仕組みの上ではまったく変わらない哺乳類のコウモリが,この翼のおかげで飛べるんだ……おっぱいと翼って,どうも頭の中で一緒にならない」「噛みあった(ハリネズミの)歯は,やわらかくて,汁の多い肉を,マーマレードのようにしてしまう」「残酷な子ヒツジさらいのイヌワシや,ニワトリ泥棒のハヤブサを,勇気,高貴,高潔とたたえ,われわれに害を与えず,ノネズミの害から守ってくれているノスリを,馬鹿とか愚かとかいう。そんなことをいう人間のほうが馬鹿だ」「先生という敬称は,相手をおだてる時だけ必要だった。チーズが手に入ったら,もう先生なんていわない。だんな,で十分だ」